お勧め漫画: 金田一少年の事件簿
概要
名探偵コナン (Amazon link) とともに一つの時代を築いた、少年推理漫画の代表作。1995 年に第 19 回講談社漫画賞少年部門を受賞している。
本格推理漫画ということで、作品中に全てのヒントが書かれており、非現実的な道具などは登場しない。孤島や山奥などの隔離された環境で殺人が起こるパターンが多く、登場人物はだいたい犯罪の原因となる過去がある。シリーズの最後の方では、芸術的な犯罪計画を一般人に提供するラスボスという探偵学園 Q と同じパターンが出てきている。
特に初期、犯人の自殺が多い。長編 37 編中 7 編で犯人が自殺しているらしい (1)。「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は... 殺人者と変わんねーよ」というコナンのセリフが物議をかもしたことがある。
別の漫画だけど、一八先生の金田一回はマジで面白かった。「純全帯么九 (ジュンチャン) の名にかけて!」と「卓上に横たわる無残な 3 本のリーチ棒の姿だった・・・」は忘れられない。
主人公
金田一 一 (きんだいち はじめ)
金田一耕助の孫、IQ180 の高校生。手先が器用で、マジックやスリなどを事件解決に活かすことがある。
決め台詞は「ジッチャンの名にかけて!」「犯人はこの中にいる」「謎はすべて解けた」。ジッチャンは、初期は「金田一耕助」にジッチャンというルビがついていたが、のちに片仮名になっている。
名言
「ジッチャンの名にかけて!」も有名だけど、金田一の最高の名言はこれ。悲恋湖殺人事件の犯人、遠野についての美雪との会話。「カルネアデスの板」は、船の事故で海に投げ出されたとき、一人しか掴まれない板をめぐって相手を突き飛ばす (つまり殺す) のは正当とする論理で、このストーリーの謎の中心になっている。
- 金田一: もし あの時の船の事故に遠野も一緒にのっていて・・おぼれた二人が「カルネアデスの板」をつかんだとしたらどうしたかな?
- 美雪: そうね・・きっと迷わずその板を螢子さんにゆずって 遠野センパイは死を選ぶんじゃないかしら
- 金田一: そうだな・・
- 美雪: ねえ はじめちゃん?
- 金田一: ん?
- 美雪: はじめちゃんならどうする? 私とはじめちゃんが同じような目にあったら・・・
- 金田一: うーんそーだなあ 俺だったら・・
考えるだろうな。 - 美雪: 考えるって何を?
- 金田一:
二人とも助かる方法をさ!! - 美雪: ・・うんっ!
安易に死を選ぶのは相手のためにならないことを知った金田一。美雪への愛情と、自らの頭脳に対する自信が小気味よく伝わってくる名言だ。
個人的に好きな場面というだけだったのだが、あとがきで原作者がこのシーンに言及していた。曰く「... という一言を思いついた瞬間、決して "あきらめない" ハジメという主人公のスタンスが自分の中で完成されて気がしたのを、読み返してあらためて思い出しました」。
ヒロイン
七瀬 美雪 (ななせ みゆき)
金田一の幼馴染、成績優秀な生徒会長、演劇部。初期は犯人に怪我をさせられることが多い。この時代の少年漫画のヒロインのお約束なのか、かなり嫉妬深い。
名言
- その日・・・私は生まれて初めて学校をサボりました。ちょっぴりドキドキしたけど、それは うしろめたかったからじゃなくて・・もしかしたら・・
サブ
明智 健悟 (あけち けんご)
東大卒、ロスで犯罪心理学を専攻したキャリア組。初登場は最初は 3 巻の雪夜叉エピソード。このときの肩書きは警視だが、金田一につっかかり小物感満載。推理を 2 回も外し、うち 1 回は犯人のミスリードに完全にひっかかる。さらに推理をゲーム扱いし、金田一に「まだそんな低次元なこと言ってんのかよアンタ」と酷評される。
このように散々なデビューを飾った明智だが、人気が出るにつれて能力の高いライバルキャラになっていく。この出世ぶりは 幽遊白書 の飛影に通じるところがある。父は、三億円事件を追って解決できなかった警察官。
公式スピンオフとして 明智警部の事件簿 (全 5 巻, Amazon link) があり、これも面白い。本編の直前までをカバーしており、終盤に向けて絵柄を次第に金田一本編のものに近づけていっている。さらに、初登場時の明智が悪者だった理由まできちんと説明するという原作へのリスペクトぶり。一読の価値あり。
名言
- ロスでは、あのくらいの謎解きは日常茶飯事だったよ。
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シリーズ
以下のメインシリーズのほか、スピンオフや短編集もある。
金田一少年の事件簿 |
オリジナル。原作 金成陽三郎、漫画 さとうふみや。メモ的に事件を列挙しておく。各章には FILE というタイトルがついているため、FILE シリーズと呼ばれる。
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Case シリーズ |
脚本 金成陽三郎、漫画 さとうふみや、原案 天城征丸。 各章が Case ** というタイトルになり、Case シリーズと呼ばれる。内容的にはそのまま FILE シリーズの続きである。イトコの金田一フミがこのシリーズで登場する。このキャラは、顔が金田一とそっくりの少女で、頭がデカすぎ。非常に不気味だった。美雪がミステリ研と演劇部をかけもちするようになる。
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新シリーズ |
原作 天城征丸、漫画 さとうふみや。以下のエピソードが含まれている。上下巻のものもあり、全 13 巻となる。 最初のエピソードは、Case シリーズの最後に自転車で旅に出てから一ヶ月後。絵柄がかなり変わった気がする。
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20 周年記念 |
原作 天城征丸、漫画 さとうふみや。登場人物の過去の繋がりとか、密室殺人とか、まあワンパターンではあるのだが、マンネリに陥らないようにいろいろと工夫がある。このシリーズは絵柄も安定してきて、とくに面白く読めた。
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R リターンズ |
原作 天城征丸、漫画 さとうふみや。20 周年記念と雰囲気が近い。これだけシリーズを続けて、クオリティを保っているのは驚異的といえる。
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37 歳の事件簿 |
久しぶりの続編は、大胆にも 20 年後。子供の頃に金田一を読んでいた中年をターゲットにしたのか。美雪が航空会社のチーフパーサーで世界を飛び回っているという設定で、金田一へのライソでしか登場しない。 金田一も、これまでのように事件解決はするものの、もう謎は解きたくないと言っていて、いったい何があってこの状況になったのかよくわからない。謎解きに関わって悲劇があったことが仄めかされていて、どうも速水玲香と関係がありそう。 これらの設定が相当長い間引っ張られていて、ネットでは美雪は実は死んでる説も飛び出すほど。 金田一がよく使う「なるほどですね」はあまり好きじゃない言葉だ。 |
関連リンク
- 名探偵コナン 自殺を全力で否定することの素晴らしさ. Link: Last access 2018/09/13.
- コナンと金田一だったら、どっちが優秀な探偵ですか? Link: Last access 2018/09/15.
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