お勧めコミック: 築地魚河岸三代目のレビュー
シーフード版の美味しんぼみたいなもの。書かれている知識はわりと本格的。ストーリーは人情噺が多くて、ベタだが泣かせにくる感じ。学んだことは多いが、20 巻あたりから勢いが落ちてくる気がするのが残念。
魚はしっかりと書かれている反面、人の描き方はけっこう適当。雅さんなんか特に。後半に登場するギャルキャラなども、適当な感じが否めない。
- 6 巻、アゴだしのラーメンの話。小太郎いい奴。
- 11 巻、手塩にかけた干物。おやじさんの愛情に泣ける。
築地の歴史
徳川家康が、摂津の佃村から漁師を呼び寄せ、江戸前の海で漁業権を与えるかわりに、城に魚を献上させた。残った魚を漁師たちが売り始めたのが魚河岸のはじまり。当初は日本橋にあり、関東大震災で築地に移った。なお、摂津はいまの大阪府である。漁師が移住したのは江戸の向島だが、この経緯から佃島と呼ばれるようになった。諸説あるが「佃煮」という言葉の由来もここにある。
2018 年に豊洲へ移転。この漫画のラストエピソード「さようなら三代目」も、豊洲移転に関わる話になっている。
主人公
赤木旬太郎 (あかぎ しゅんたろう)
もとは銀行員で、100 人の従業員をリストラすることになってしまい、自分を 100 人目に選んだ。新しい仕事として、妻の父親の後を継ぎ、築地の魚河岸・魚辰の三代目になった。
魚に関してはシロウトだが、味の感覚と舌の記憶に優れており、他人のために一生懸命になれる人徳がある。
ヒロイン
赤木 明日香 (あかぎ あすか)
主人公の奥さん、グラフィックデザイナー。魚河岸の娘だが、魚料理はあまり得意でなく、食べ役に回ることが多い。三代目が若い男女の世話を焼くときには、女性の方を担当して助けることが多い。
サブ
英二さん (戸川英二)
素人の三代目を指導するような役割を果たす二人をサブとして載せておく。まずは、同じ魚辰で働く英二さん。本来は高級割烹の板前で、店でのトラブルによって魚河岸に一時的に出されているうちに居着いてしまった。彼のために、魚辰は高級鮮魚も取り扱うようになる。
「ちあき」という店で包丁を握る。魚を料理するのは彼の役目。
新宮三代目
築地のサラブレッド、三本の指に入るという目利き。ツンデレ属性。英二さんと極めて似ているので、両者の目利きには熟練を要する。
名言
- ダムの建設現場に立って私は絶望した・・ しかしアナタは・・ 今度ばかりは認めざるをえないでしょうね。
- (シロウトさんが目利きできない、商品知識もない・・ そんな事ぁ 当たり前じゃねぇかよん! というハイエナ先生のセリフに続いて) だからこそ私たちプロが シロウトさんの
目となり舌となり 働いているんでしょう。そのクロウトがシロウトを騙すとはもってのほかです。恥を知りなさい。
広告
雑感
私が三代目から学んだこと
6 巻 Fish 1 |
カキには加熱用と生食用がある。生食用のカキは、海から揚げたあと殺菌済み海水に 24 - 48 時間ほど活かし込み、浄化してから出荷する。この過程でカキが痩せてしまう。剥き身の生色用カキのパックでは、塩素を入れた海水で殺菌しており、これも味を損なう。 加熱用カキは浄化処理をしていないだけで、鮮度などは生食用と変わらない。ただし、店によっては鮮度の落ちた生食用カキを加熱用に回すところもあるらしいので、加熱用カキを生で食べてはいけない。 カキの食中毒はウイルスによる。カキは、二枚貝の中で唯一、内臓も丸ごと食べる貝であり、内臓にウイルスが多く含まれる。 |
7 巻 file 2-3 |
キスの天ぷら。シロギスは上品な味だが、ちょっとクセのあるアオギスは江戸前の天ぷらダネとして人気だった。アオギスは東京湾では 1960 年台に絶滅してしまい、現在では九州地方のみに生息する絶滅危惧種。東京湾に種苗を放流する計画があるらしいが・・ |
12 巻 Fish 1-3 |
岡山では、サワラを刺身で食べる。 |
13 巻 Fish 1-2 |
おでんの語源は「田楽」。もともとは、味噌を使った煮込み料理だった。江戸末期に醤油が発明され、醤油味に。寿司のようなファストフードだったらしい。 関西にも伝わった後、江戸ではなぜか食べられなくなる。「関東炊き」の名称はここから。関西でおでんはさらに発展を遂げ、現在のようなコンブだしのものが主体となる。関東大震災の際、関西の人の炊き出しによって関東に逆輸入され、現在に至る。 具は非常に多様だが、魚の練り物が中心となる。 |
13 巻 Fish 1-2 |
アオヤギは産地青柳村からの通称、標準和名はバカガイ。小柱はこのアオヤギの貝柱で、大柱と小柱がある。手に持っても殻を閉じず、馬鹿っぽく見えることからというのが通説。 このほか、名前の由来としては、環境の変化に敏感ですぐに移動するので「場替え貝」、馬鹿みたいにたくさん採れたから、馬加 (まくわり) という産地の音読みなどいくつか説がある。 |
14 巻 Fish 3-4 |
カラスミ発祥の地はイタリアのサルディニア島で、シルクロードを通じて中国に伝わったという説がある。日本では、1588 年に中国から輸入したものを、長崎代官の鍋島信正が豊臣秀吉に献上した際、形が唐の墨に似ていることからカラスミと呼ばれるようになったようだ。 1675 年、長崎の高野勇助が作り始め、江戸時代には肥前のカラスミ、三河のコノワタ、越前のウニが三大珍味とされた。かつてはいろいろな魚の卵で作っていたようだが、江戸時代には安価で手に入りやすいボラの卵に落ち着いた。イタリアでは、マグロの卵を使ったボンノ、ボラの卵を使ったムッジーネ、マルーカの卵で作るマルーカの三種がある。 ボラは出世魚で、オボコ、イナ、ボラ、トドと呼び名が変わる。「とどのつまり」はここから。江戸っ子の信条「イナセ」は、ボラの背の意。江戸時代、魚河岸の若者の間でマゲをボラの背のような形で結うのが流行し、これが突っ張った髪型としてイナセと呼ばれた。威勢がよく、向こう見ずで気が短いが、権威や金に阿らず筋を通す生き様を示す言葉である。 |
15 巻 Fish 1-2 |
金沢ののどぐろは、他の地域ではアカムツと呼ばれることが多い。ただし、ムツ科でなくホタルジャコ科に属する魚で、正式にはムツの仲間ではない。 口の中が黒いことから。金沢地方の魚だと思っていたが、長崎、千葉などでも獲れる。鮮度の低下が早いので、近い産地のものの価値が高い。金沢での旬は 12 - 1 月。4 月からは産卵期に入り味が落ちるが、旬の時期は沖に移動するため漁獲量が下がるので値段が上がってしまう。 |
34 巻 Fish 3-5 |
日高コンブは出汁に使ってもいいが、柔らかいのでコンブ巻きに最適。利尻コンブは澄んだ上品な味わいが特徴で、塩気がやや強い。甘みのある豆腐や野菜と調理するのが適している (湯豆腐)。羅臼コンブは出汁が濁るが、旨味が強い。寄せ鍋などがベスト。他にも真コンブ、長コンブという種類があるようだ。 天然コンブのほとんどは北海道でとれる。江戸時代、コンブは北前船で南へ運ばれたが、太平洋側は波が荒いので、日本海側のルートがとられた。その寄港地が富山、敦賀、下関など。下関からは大阪方面や九州・沖縄方面へ運ばれた。これが、コンブ出汁が関東で発達しなかった理由。 コンブの旨味は主にグルタミン酸。これは肉、魚介類の旨味成分イノシン酸や、シイタケのグアニル酸と相乗効果を発揮する。 |
38 巻 Fish 4 |
タコの墨は煙幕で、広がって捕食者の目をくらます。イカの墨は「変わり身の術」で、広がらずに囮となる。捕食者が間違えやすいように、イカの墨には旨味成分が多く含まれている。そのため、イカスミは料理に使われるが、タコの墨は使われない。 |
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。