お勧め漫画: 村祀りの感想・ネタバレレビュー
日本の古い「村」には、独自の風習がある。夜這い、夜伽、神隠し。民俗学をホラーっぽい感じで背景にしながら、研究者の主人公が怪しい風習のある村を回る話。黒い仏 (まくろさま) が全体を貫く謎になっている。あくまで民俗学で、妖怪の話は出てこないが、雰囲気で上に妖怪漫画のリンクを作っておいた。
数話ごとに異なる村が出てくる連作短編集。面白いんだけどエログロ要素が多すぎることから 2 評価とした。9 巻あたりから始まる新しいストーリーは迷走していたと思ったが、海土路愛人も黒仏に連なる者であったので、一応は元の話に着地して安心した。
著者・山口譲司 (やまぐち まさかず)。2024 年 10 月時点で 19 巻まで読了。同じ著者による 民俗学者八雲樹 も似た雰囲気の漫画である。
主人公
三神 荒 (みかみ こう)
民俗学者または本草学者。漢方薬の行商人として、怪しい風習のある地方の村を回っている。目的は、かつてのパートナーだった忍をもとに戻すこと。
「まくろさま」は、黒聖という一族が悪用を試みている。麻薬を使って私兵を作っていて、秘密に近づくものは毒をもられてしまう。と思ったら実態はさらに奥深く、平将門の末裔が権力者を大量死させる計画のようだ。
1 巻で、表紙に「八雲樹」とアルファベットで書かれた本を読んでいる。
ヒロイン
園山花梨 (そのやま かりん)
三神のパートナー、忍は黒仏に近づきすぎて毒をもられ、植物状態にある。そのそっくりさん。化学専攻の大学生? または大学院生? で、たまにその知識を使って三神を助ける。
目的がわからず連れ回されることに耐えられなくなって三神のもとを去ったと思われたが、実は黒仏の悪者のアジトに潜入しており、ピンチで登場する。頼もしいヒロイン。
サブ
蓬莱 (ホーライ)
正体はよくわからないが、三神とつるんでいる中国系の商人。二人の活動の収益が、三神の研究資金になっているようだ。
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雑感
民俗学的な話題で、興味深かったものをここにメモしておく。どっかで聞いたことがあるような話ばかりだが、情報を集めていって、いずれは独自のページを作れるようになれば。
草薙剣 (くさなぎのつるぎ)
天叢雲剣 (あめのむらくものつるぎ、あまのむらくものつるぎ、あめのむらぐものつるぎ、 あまのむらぐものつるぎ) とも呼ばれる。草薙剣という名前の方が馴染みがあるのは、ドラクエ 3 の影響かもしれない。以下、基本事項。
- 須佐之男命が八岐大蛇の尾を切ったら出てきた剣。最初は天叢雲剣と呼ばれた。まず高天原に奉じられ、天孫降臨の際に伊勢神宮へ移る。
- 天孫降臨の際にアマテラスがニニギに授けた三種の神器の一つ。他の二つは八咫鏡 (やたのかがみ) と八尺瓊勾玉 (やさかにのまがたま)。その後、東の国を制圧することを命じられた日本武尊 (ヤマトタケルノミコト) に与えられる。
- 日本武尊の東征の途中、現在の静岡県焼津付近で火攻めにあい、この剣で燃えている草を切って難を逃れたことから、草薙の剣と称される。現在は、熱田神社に奉納されている。
以下のような解釈があるようだ。
- 火を吹く八岐大蛇を倒して手に入れたのは、火を使う製鉄集団を当時の王が制圧したことの隠喩。
- 枝分かれした川の治水事業の隠喩。八岐大蛇が枝分かれしていることから。
まれびと接待、六部殺し
人の行き来が少ない村では、村の外から「子種」をもらうための接待が行われていた。その反面、旅人を襲って金品を強奪することもあり、これが本作品中では「六部殺し」に代表させられている。六部とは法華経を写経するために各国をめぐる巡礼僧であり、六部を殺して財を成したある農家が、六部の生まれ変わりの子供に断罪されるストーリーが「六部殺し」という怪談である。
八尾比丘尼伝説
最初に知ったのは、「火の鳥」だった。
シキミ酸
シキミ酸はアルカロイド合成の前駆体。樒という木から取れるのか?
神隠し
貧しい孤立した村で養いきれなくなった人や、人々に害を及ぼす無法者を、村で排除してしまうシステムという側面がある。村ぐるみで排除し、表向きは神隠しにあったとする。
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