お勧めコミック: うしおととらの感想
寺の息子「うしお」と妖怪「とら」が、妖怪と戦いつつ心を通わせていくバトル漫画。サンデーで唯一「日本のメディア芸術 100 選マンガ部門」に選出された漫画である。
ラスボスである白面の者は、人や妖怪の「恐怖の心」を食べて自分の力にする。最後の戦いでは、うしおととらが救ってきた人が、白面と戦う彼らの姿に希望を感じ、結果として白面の力を削ぐことになる。人助けをしながらの長い旅が無駄でなかったことをわからせてくれるラストは壮観。
漫画自体の雰囲気はぜんぜん違うが、脳噛ネウロ でもこんな感じのラストの盛り上がりがある。今の感覚からすると絵が古いが、感動できる漫画を探している人は読んでみるといいかも。
ストーリーもよく練られており、獣の槍にある文字、とらの正体など、かなり経ってから明らかになる伏線も多い。いま連載されていたら、「回収されましたね!!」という鬱陶しいサイトがたくさんできることだろう。
2020 年 4 月、評価を 5 から 4.5 に変更。
藤田和日郎、全 33 巻 + 外伝 1 巻。同じ作者による 双亡亭壊すべし も必読。
主人公
とら
この作品は「うしお」と「とら」の 2 人が主人公だが、私は「とら」派。
寺であるうしおの実家の地下に、妖 (バケモノ) を滅ぼす
稲妻や火炎を操る強力な妖怪であるが、長い間に蓄えた知識で
1 種 1 匹のみの不思議な種族であるが、物語が進むに従ってその出自が明らかになる。愛情表現は「食べる」ことだが、これにも伏線がある。
21 巻、お外道さんとの戦い。呪禁歌を唱える場面がお気に入り。お外道さんが獣の槍で箱に封じられた情景が想像できる。
昔日にひょうびょうとすすき野の啼く 彼の時を思えい汝 (なれ) よ。
侍 髪長くして長柄は隠形の型。汝を幾重にも責め刻む。
曰くこれより汝が棲まふのは小さき箱。以て現に出ること能はず。
名言
- 気に入らん! 気に入らんなあ、一鬼。てめえらの力が弱えーのを、人間の女ごときのせいにして! しかも直接やらねえで、そのムスコにあたる根性がよぉ!!
ヒロイン
井上真由子 (いのうえまゆこ)
本命ヒロインはもちろん中村麻子、私のお気に入りは敵役 → お色気担当 → 味方と役割を変化させ、最後の戦いで名言を残す
中村麻子と同じく、うしおの幼馴染。当初はうしおに恋心を抱いていたが、「麻子も好き」なので 3 人の関係を崩したくない、と身を引き、やがてとらに恋?のような気持ちを抱くことになる。真由子があげたハンバーガーがトラの好物になる。
のちに、何代かにわたって白面の者を封印する「お役目様」の次の担当者であることが明らかになる。もしこの役目についた場合は、ずっと海底で結界を張り続けなければならなかった。
名言- とらちゃんの胸にもう - 穴なんてあいてないよ!
- まだ、ハンバーガーって聞くと・・泣いちゃうんだ・・
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サブ
白面の者
数千年前の中国で発生した強大な妖怪。800 年前に日本に渡り、とらを含む妖怪たちと人間が共同でようやく撃退する。
日本の南の海中で回復を図っており、うしおの母が結界を張っている。正体は 9 尾の狐であり、それぞれの尾が強力な妖怪だったり稲妻だったりする。
左の絵では、中央下方に「お役目様」が座っている。このサイズでこの邪悪な目つき。見た目、パワー、悪さ、全てトップクラスの敵役である。
宗像教授シリーズ で触れられていたが、この白面は古典的な「九尾の狐」の話をかなり取り入れている。他の国での悪事など、この漫画の創作かと思っていたが、そうではないようだ。以下は宗像教授の説明。
- 久寿元年 (1154 年) に、鳥羽上皇のもとに玉藻前という美女があらわれ、寵愛を受ける。うしとらの「800 年前に日本に渡り」は、この年代を意識しているものと思われる。また、地獄先生ぬーべー でキツネ妖怪の名前が玉藻なのも、ここから採られた由緒ある名前だったようだ。
- 高名な陰陽師 安倍泰成が占ったところ、玉藻前はインドと中国で悪さをしてから日本にやってきた。中国では悪名高い紂王の妃、妲己であった。紂王、妲己はいずれも周の武王に殺された。
- 退治された玉藻前 (九尾の狐) は、殺生石となった。玄翁和尚という南北朝時代の僧が、現在の栃木県那須で金槌で殺生石を打ち砕いて、毒気を出さなくなった。金槌を「げんのう」と呼ぶのはこれに由来する。
雑感: 好きなキャラやセリフ
- セリフが全て平仮名のオマモリサマ。「このおん、わすれまいぞ」
- 渋いお兄さん、理解者でありながら、なんと白面側につく秋葉流。「風が... やんだじゃねえか...」。とらが作品中で明確に殺した唯一の人間でもある。
- かっこつけまくりの符咒師、鏢。「その男は一人でやるのが好きらしい」
- 土壇場で人々に希望をもたらしたテレビ丸の内の守矢克美。
関連リンク
- うしおととらあらすじ (原作ネタバレ注意). Link.
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