お勧めコミック: 双亡亭壊すべしの感想
概要
まずタイトルからしてスゲェ。「双亡亭壊すべし」。緑朗の父の単純とも思える言葉「このイエはダメだ・・・ よんでコイ・・ ココをこわすモノを・・」がとても恐ろしく響く。1 巻から読んでいくと、突然現れる血の涙を流した緑朗がめちゃくちゃ怖い。
液体の生命体というのは斬新な発想だったし、歴代の総理、超能力者、科学者など多くの人が「双亡亭を壊す」という一つの目的に向かって力を結集させる勢いは、からくりサーカス や うしおととら から全く衰えていない。さらに、これらの作品に比べて短くなっていることで、中弛みのようなものも一切なし (1)。藤田和日郎、恐るべし。
多くの人が、泥努を嫌いになりきれないんじゃないかと思う。こういう不思議な魅力のあるキャラを作れるのも凄い。2021 年 8 月、堂々の完結。全 25 巻。
主人公
凧葉 務 (たこは つとむ)
マルチ主人公の成功例とも言える作品。緑朗、青一、タコハはいずれも主人公と呼ぶに相応しいが、ここはタコハを挙げておこう。
美大を卒業したばかりの画家。絵本作家志望だが、出版社からの評判はいまいち。双亡亭の隣にあるボロアパートに住んでおり、緑朗にふざけて「オレなら屋敷の奥も探検してみたい」と言ったことに責任を感じて物語に巻き込まれてゆく。
その人柄から、双亡亭による精神攻撃に打ち勝つことができ、双亡亭を壊すという強い意志もある。10 巻で、霊体となって霊能力者たちを説得して回る場面は面目躍如。絵描きであるために、泥努の描いた絵を塗りつぶすこともできる。
ヒロイン
拓殖 紅 (つげ くれない)
刀の舞の神楽を奉納する巫女の家系に生まれ、短刀を使って悪霊を祓う「刀巫覡 (かたなふげき)」として修行を積んだ特別な巫女で、お祓いの力は日本一とされる。驚いたことに、「刀巫覡」は漢字変換可能。作者の造語だと思っていたのだが、たぶん本当にあるのだろう。
緑朗の姉。修行や両親の離婚のために離れて暮らしていたが、父の死と緑朗のピンチに上京。幼い頃、不注意で火事を起こしてしまい、緑朗が火傷を負う。これがトラウマになっていて双亡亭に取り込まれかけるが、タコハの助けにより生還する。
名言- タコハさんは頼りないし・・ 何かと争う強さも持っていません・・ ですが、何か・・この双亡亭に対抗する何か・・大事なものを秘めているような気がします・・
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サブ
凧葉 青一ほか、双亡亭を壊そうとする人々
凧葉 青一は、45 年前に行方不明となった少年。当時は小学 6 年生で、凧葉の遠縁の親戚にあたる。手足をドリルにして双亡亭に住む魔物を粉砕することができる。
連載漫画では、前の回の内容を少し入れて話を始めることがある。第 36 回から 37 回に繋ぐところは青一の手がドリルになった背景なのだが、同じ場面を繰り返しつつも違った視点で新しい情報 (青一がテレビでドリル車を観たことなど) を提供していて、繰り返しが無駄になっていない。このあたりも上手いと思う。
この作品には、他にも双亡亭を壊そうとする人々がたくさん登場する。妙に気に入ってしまったのが、戦いの発端を開いたとも言える総理。
雑感: 好きなキャラやセリフ
- 甚だしいの使い方が正しいのかわからないが、勢いで押し切られた。鬼離田琴代: 特に、画に降りた鬼神は、力はか弱きものなれど・・薄い! それは今、閉じようとしておる、雪代姉の心のスキマに・・
侵入すること甚だしい! - 帰黒: この地は・・「土地」がもう駄目・・なのでございます。
- バレット元 CEO: これは・・私のプライドの問題ダ・・ 私は 私にできないコトを・・自分より劣った若者にされるのを快く思わナイ! そして・・私ハ・・妻の命を助けた彼に・・まだ礼を言っていナイ・・
- 坂巻泥努: 空間に満ちている、「人の心に働きかける粒子」 それをキャンバスという平面に注ぎ込み、平着させるのが、「絵を描く」ということなのだ。
液体生物が、支配した人の「記憶」を使って「人格」をそれらしく構成するというのは、この作品のしばらく後にブレイクした生成 AI を思い起こさせる。これもちょっと不気味だった。
関連リンク
- 双亡亭壊すべし 完走した感想. Link: Last access 2024/02/19.
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