おすすめコミック: 辺獄のシュヴェスタのネタバレレビュー
概要
物語は 1542 年、現在のドイツ南西部で始まる。口減らしで売られた主人公エラは、薬草などの知識をもつアンゲーリカに拾われ、母娘となる。しかしアンゲーリカは魔女の疑いをかけられ、拷問の末に殺されてしまう。
魔女の娘だけが集められた修道院でエラの復讐が始まるが、敵に囲まれた状況でどうやって生き延びられるのか・・・!?
約束のネバーランドのページ にも似たようなことを書いたが、修道院系というジャンルができてしまいそうなほど、この漫画と 約束のネバーランド (Amazon link) は衝撃的だった。残酷な描写が多いのでお勧め度は低く抑えておいたが、とんでもない作品。
シュヴェスタ schwester はドイツ語で「姉妹」。おそらく英語の sister にあたる語で、ここでは「修道女」の意味だろう。辺獄は ページ下方の「雑感」のところで説明あり。
竹良 実、全 6 巻。

主人公
エラ・コルヴィッツ
子供の頃から「火を飼っとる」と言われるほどの強い意志をもつ。長く辛い修道院生活で見せる意志の強さは凄まじい。
名言
- 誰だか知らないけど。そうやって後ろから投げつけている限り... 一生かかっても 前を向いて歩いている人間の顔は汚せないわよ。
ヒーロー
ヒルデ・バルヒェット
あまり重要な男性キャラがいない漫画。エラと一緒に脱獄を試みる 4 人の仲間からヒルデを紹介。
犬アレルギー。決め手は再登場シーン。あんなに頼りなく、5 人のお荷物的な感じになることもあったヒルデ。脱出時に死んでしまったと思っていたのが、逞しくなって馬で救いに来たら、感動は避けられない。さらにはテアと一緒に聖アントニウスの火に関する本の出版までする活躍ぶり。
サブ
エーデルガルト
クラウストルム修道会の総長。「異端」とみなした人々への容赦の無さで有名となった。アンゲーリカを殺した仇でもある。生まれながらに痛覚を持たない。
倫理を欠いた人体実験などを通して、麦角の秘密を知ったり、輸血の方法を開発したりと、修道会で科学を発展させている。それを利用して権力を拡大している。目的は、独占した知識を「奇蹟」として民衆に与え教化すること。修道女から人間コンピューターを作り出し、情報を独占する計略も進めており、やることなすこと全て邪悪。
雑感
関係する知識をつらつらと。
宗教改革 |
権力が大きくなって腐敗したカトリックに対して、キリスト教の原点である聖書の教えに立ち返ることを目指した運動。「プロテスタント」が生まれた。 1517 年、ルターがローマ教会に抗議してヴィッテンベルク市の教会などに 95 ヶ条の論題を打ちつけたことが宗教改革のきっかけとされることが多く、この漫画はそれから数十年後、カトリックが虐待され暴走している背景で描かれている。1 巻、アンゲーリカが処刑される場面で「正当な教会の教えに背くルター派」というセリフがある。 このサイトには、キリスト教に関するページも多数ある。サイト内検索からどうぞ。「カトリックとプロテスタントの違い」のページなどは、この漫画の背景を理解する上でお勧めです。 ![]() |
聖アントニウスの火 |
ペスト、ハンセン病とともに中世で流行した疫病の一つ。ライ麦、小麦、大麦などにつく麦角菌がアルカロイドを合成し、食べると食中毒や幻覚を引き起こす。この病気による幻覚が、セイラム魔女裁判の引き金になったという説もある。 |
辺獄 |
リンボ Limbo とも呼ばれる。アケローン川を渡った直後で、地獄の最初の部分である。興味のある人は、ダンテ「神曲」にみる地獄の概念・構造について へどうぞ。 聖書には登場せず、公式な教義における存在ではない。カトリック教会は何度も公式に辺獄に言及しているが、プロテスタントでは正式な概念ではないようである。 最後の場面にも書かれているように、辺獄は洗礼を受けなかった者が来る場所である。責めもないが希望もなく、死者はここで永遠に時を過ごさなければならない。 |
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