おすすめ漫画: チ。地球の運動についてのネタバレレビュー
概要
15 世紀のヨーロッパが舞台。C 教の迫害にめげず、地動説を確立するために命を捧げた人々の「知」への熱い情熱を描く漫画。「C 教」となっているが、これは明らかにキリスト教を暗示しており、舞台はポーランドを意識した「P 王国」。チは「地」であり「知」であり「血」。
多くの人が指摘しているように、キリスト教の地動説への迫害は一般に信じられているように (またはこの漫画で受ける印象よりも) 激しいものではなかったようだ。管理人も、ガリレオなどの逸話からなんとなく迫害があったものと思っていたが、たとえばコペルニクスは司祭を務めるなど、教会と良い関係を保っていたらしい。それは作者も十分に知っているようで、最終巻では、この物語は地動説に否定的な権力者がいる限定的な地域の話、というようになっている。
著者・魚豊。全 8 巻。スピリッツでの連載は 2020 - 2022 年。2024 年にはアニメ化も。

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主人公
ラファウ
12 歳で大学進学を認められた神童。地動説の美しさに魅せられ、こっそりと研究を続けている人生計画を立てるが、義父・ポトツキの密告によりノヴァクに捕まる。このままラファウが主人公で行くのかと思ったが、1 巻であっさりと自害してしまい、物語は次の人物へと受け継がれる。
最終巻で、突然ラファウという名前で見た目もそっくりな男が出てくる。これは、ネットでも議論があるが、ラファウが実は生きていたというのは考え難く、同姓同名で見た目もそっくりな別人、もしくはパラレルワールドと考えるしかない。
ヒロイン
ヨレンタ
宇宙論の研究所で助手を務める少女。実は敵役の異端審問官・ノヴァクの娘。バデーニの難問を解くほどの優秀な頭脳をもつが、女性であるために満足に研究をさせてもらえない状態にある。
第 3 章では、異端解放戦線のボスとして登場する。この時点で 39 歳。
サブ
ノヴァク
傭兵出身の異端審問官。ラファウをはじめ、歴代の地動説研究者を迫害する悪役。
雑感
史実よりも約 200 年先行しているようだ。いずれ、地動説の成立などについても調べてまとめてみたい。
Ref. 1 の 「チ。―地球の運動について―」感想。〜歪で不誠実で不愉快なこの傑作漫画について〜 について。
科学の発展は、天才の頭の中だけで起こるのではなく、さまざまな社会的な要請や技術的発展に応じて起こると繰り返し主張する。このことから、人々の情熱へ過剰に焦点を当てた本作は、科学に対して不誠実と批判している。エンターテイメントである漫画に対する野暮ないちゃもんに思える一方、この漫画がかなり史実っぽい雰囲気で書かれているので、いろいろ誤解を招きやすいという点では賛成できる部分もある。
一方で、科学の発展は社会情勢に影響されるというのはその通りであるものの、このページはそこを強調しすぎている気がして、「天空の扉」に軍事オタク感があるのと似たような感じで、読んでいてあまり愉快なものではなかった。
関連サイト
- 「チ。―地球の運動について―」感想。〜歪で不誠実で不愉快なこの傑作漫画について〜 Link: Last access 2025/01/06.
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