おすすめ漫画: 課長島耕作のレビュー

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このページの最終更新日: 2020/11/26

島耕作シリーズの第一弾。登場時にはやや冴えないサラリーマンだった島耕作が、とにかく女性が寄ってくる という特技を最大限に生かし活躍する物語である。「どんな時代でも、島耕作は最前線で闘っていた」は良いキャッチフレーズ。

舞台はニューヨーク、京都、博多、フィリピンなど。時代は 1980 - 1990 年代。サラリーマン漫画は大体そうな気がするが、とにかく偶然を味方につけることが出世のキーであることがよくわかる (ご都合主義とも言う)。たとえば、町中でみすぼらしい老人に声をかけられたら、それは取引先の会長が変装した姿であるので、優しくしておかなければならない。

宴会での裸踊り、派閥争い、休日のゴルフなど 社畜要素が満載 である。この時代のサラリーマンたちは、本当にこういう時代を生き抜いてきたのか、漫画ならではの誇張が入っているのか、興味がそそられる。部長、取締役・・・と島が出世するにつれてつまらなくなるので、課長と部長あたりがお勧めです。

弘兼憲史、全 17 巻。


主人公

島耕作 (しま こうさく)

初芝電器産業に勤めるサラリーマン。次第に、特定の派閥に属さず自らの信ずるところを行うサラリーマンの鏡になっていくが、「課長」では現実的な妥協をする場面も多い。一人っ子の娘がいるが、家庭は冷え切っている。これも、おそらくこの時代には普通の現象だったのだろう。

サラリーマン金太郎とかもそうだけど、こういうサラリーマン漫画で、主人公が成功する秘訣は偉い人とのコネであり、主人公に都合よくコネを与えるために、多くの「偶然」が使われる。



ヒロイン

アイリーン

大町久美子が本来のヒロインであると思うのだが、ここは島耕作と 子供まで作った アイリーンをヒロインとして挙げたい。

ニューヨークでボブという黒人男性と暮らしていたアイリーンは、なぜか突然島耕作を誘う。

下の絵のように、とんでもないやりとりでボブとの 3 角関係が作られることになる。

しかしこの 3 角関係は対立ではなく、2 人の男がアイリーンを共有するという形で丸く収まってしまう。生まれたら肌の色でどちらの子供かわかる という状態で、島耕作は帰国する。自由の国ならではの展開であるが、キリスト教徒が聞いたら卒倒しそうな話である。


サブ

中沢喜一 (なかざわ きいち)

島耕作の上司で、やがて初芝電産の社長に就任する出世頭。

サラリーマンとしての生き様を島に教えた上司である。

サラリーマンの鏡のように描かれているが、家庭は冷え切っており、ボクサーの隠し子がいる。アメリカでは何でも自由であることに加え、会社の重役には基本的に愛人がいる という真理を我々に知らしめた人物でもある。



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雑感: 続編と読む順番について

島耕作を読む順番は難しい。出世順に読むか、執筆順に読むか。

  1. 学生
  2. ヤング
  3. ヤング・主任編
  4. 課長
  5. 部長
  6. 取締役
  7. 常務

学生島耕作

学生運動の話が中心。島耕作は早稲田出身だったらしい。学生運動にハマった友人・東北沢を救ったり、機動隊の友人を作ったりする。

ブサイクだったガールフレンドの最上陶子は、財力を生かしてフランスで整形し、美女に生まれ変わる。三沢淳子というガールフレンドもおり、このあたりは学生時代から変わらない。


ヤング島耕作

1970 年、島 23 歳前後。入社から までを描く。入社直後、研修中の島が、廃棄するテレビを川に捨てている上司に講義すると、中沢やら吉原会長やらが現れて島を擁護したりする。つまり「島は昔から凄かった、未来を見通していた」ということが、未来の場面を描いてから後付けで人物設定に付け加えられているのである。「取締役」あたりから顕著になってきた「偉い人の口を使って島を褒める」方向性が全開の作品。


ヤング島耕作・主任編

玲子と結婚。娘の奈美が生まれるエピソードで、島が名前の漢字を間違える。「外国に住むとか、肌の色の違う人と結婚するとか」などという予言的なシーンが入るのに疲れてくる。

とはいえ、若い頃を描いた作品は基本的に会長とかよりも面白いと思う。


部長 島耕作

ワイン編、レコード編、博多編に分けることができる。中沢が業績不振の責任をとって社長の座から退き、その一派とされる島も出向で各地を転々とする。社長は「攻め」の万亀に、のちに 8 巻で中沢相談役の死により岡林に。全体として、バブル崩壊後の不況の話が多い。

奈美は短大を卒業し、広告代理店に勤めている。6 巻あたりからナンシーが登場、アイリーンとの間にできた子供。ニャッコという名前も、目の色が左右で違う演出も良いとはとても思えないのだが、この時代にはナウかったということなのか。

ヤクザの娘・高市千鶴とチャコのママが一貫して活躍する。中沢相談役が死亡。島が取締役に昇進し、中国への転勤を控えて「部長」シリーズは終了。


取締役 島耕作

舞台は上海へ。結婚する高市千鶴、鈴鴨かつ子とは疎遠になり、チャコのママが上海でワインバーを開くも、薬物にはまってすぐに退場する。途中から典子ママが中国にやってきて、孫鋭らと関わりをもつ。典子ママとチャコのママの見分けは難しい。

中国裏社会の柳燕生というわかりやすい敵と、太極拳の達人で島の秘書、楊春華という、これまでのサラリーマン漫画のキャラとはちょっと違う人物が登場。後半に入ってもマフィアとの繋がりの話が多く、やや物騒な感じ。

社長は勝木清春、大泉会長が他界。ただし日本の初芝の話はあまり出てこない。このシリーズあたりから、島がなんか立派そうなことを言って周りが褒めちぎるという構図が普通になってくる。全 8 巻。


常務 島耕作

私が、取締役よりも常務の方が偉い (ヒラの取締役というものがある) ということを知ったのは、この漫画による。それまでは、取締役といえば社長のことで、一番偉いと思っていた。

島が常務に昇進し、中国全土を見るようになる。かわりに、上海の董事長には八木が就任。八木は昔は善人だったと思うのだが、なぜかいきなり中国人嫌い、島嫌いの悪人になってしまっている。後半はインドの話になる。

著者が「知識提供漫画」と言っているだけあって、このあたりからその側面が顕著になってくる。美味しんぼ も同じ傾向を見せるが、美味しんぼは左翼、島耕作は「原発はクリーンエネルギー」と語ってしまうほどの体制翼賛型なので、見苦しさは島耕作の方が上。適当なデザインの秘書・謝に向かって地球温暖化やエルニーニョについて島が蕩々と語る場面は読んでいて苦しい。鯉住首相とかいうとんでもないキャラも出てくる。四谷嵐子というのも初登場するが、これもひどいもんだ。


専務 島耕作

全 5 巻と、比較的短いシリーズ。島が専務に、郡山が社長に就任。中国、インドに加えて、アメリカも担当することになる。ニャッコが身を持ち崩し、事故で突然の死亡。後半は五洋電気の TOB の話。

原発の持ち上げぶりは相変わらずだが、ウンチクはすこし影を潜め、雰囲気としては取締役 島耕作に近い。


社長 島耕作

とうとう島耕作も社長に。五洋と合併したので、初芝五洋ホールディングスという会社の社長になって、ロゴも一新。新社名が TECOT になる。テコットとカタカナで書くとあまり格好よくないが、テクノロジーがエコを挟んでいるというのはちょっと面白い。

ロシアに進出。八木死亡。政権が主民党 (つまり民主党) に変わって、ちょこちょこ悪口が出てくる。加治隆介の子供とかも出てきて、もうやりたい放題と言える。

後半はブラジルにも行く。ブラジルサッカーのスーパースター・バチスタが島の秘書・南村に突然ベタ惚れし、結婚することになる。CM にはこれまで出たことのなかったバチスタだが、そのツテでテコットの CM に出てくれる。逆に言えば、こういうことでもない限り、サラリーマンは島のようにはなれないということで、ちょっと悲しい気分にもなる。

終盤では大町久美子が癌になり、それをきっかけに遂に島と結婚。


会長 島耕作

連載はまだ続いてるっぽい。島の外見が急に老けて財界デビュー、農業や養殖業に興味を抱くようになる。万亀と結婚して万亀萌となった謝のデザインがますます適当になり、国分も丸くなる。劣化した漫画ではなぜか顔が丸くなる傾向がみられる (シュートキャプ翼)。

集団的自衛権の話はネトウヨ的アイディアが満載で、読んでいるだけで苦しくなるレベルだ。「9 条が戦争を防いだ」っていうのは、「9 条があるから他の国が攻め込んでこない」という点よりも、「9 条があるから自民党が他の国に攻め込めなかった」という意味合いの方が大きい。後者を全く無視した論理をお気に入りの議員キャラに語らせ、島に絶賛させるのは非常にみっともない。


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