おすすめ漫画: ヒカルの碁のレビュー
概要
特殊な分野の作品であるものの、そのストーリーやキャラクターの魅力から一世を風靡し、その分野ごとメジャーにしてしまったような漫画がある。
などが該当すると思うのだが、このヒカルの碁もそのような漫画の一つだ。
囲碁のルールを知らなくても、読んでいて面白い。囲碁部の大会からネット碁の流れも熱い。国際大会でみんなが sai を探している場面なんて、それだけで感動。ベスト対局はやはり sai と塔矢行洋のネットでの一戦だろう。
緒方九段、伊角さん、越智などのサブキャラもよい。桑原先生の、いい意味での老害っぷりもいい。
1999 - 2003 年に連載された作品。なおデスノートは 2003-2006、バクマンは 2008 - 2012 なので、小畑健のヒット作品としては初期の方になる。
主人公
進藤ヒカル & 藤原佐為
ヒカルはどうも簡単に強くなっている気がして、佐為に比べるとあまり好きになれない。二人の平均で 4 ポイントの評価。
北斗杯編の一番最後のコマが「私の声が – 聞こえるのですか？」であることは、昔から不思議だった。佐為がどこかで復活しているということなのか？ その直前に、塔矢行洋が「台湾に非常に才能のある子がいる」と言っており、その子に佐為が取り憑いているという考察がネットにあった。それだとちょっとヒカルと時期が近すぎるという気もするが、そうだったら良いなあと思わせるアイディアである。
単にヒカルが回想しているだけという解釈もあり、佐為の消えっぷりからすると、こちらの方に残念ながら理がありそうな気もする。
ヒロイン
奈瀬 明日美 (なせ あすみ)
本来のヒロイン・あかりに加えて、海王の日高先輩、ネットカフェでバイトしてる三谷の姉さん、碁会所の市河さんなど、魅力的な女性キャラが多い漫画。ただし、どのキャラも出番は非常に限られている。
あかりは塔矢との対局前日のヒカルとの会話でヒロイン感を出していたが、やはりヒカルの碁で一番は奈瀬だろう。おそらく、初登場は 6 巻の和谷との会話。このときは名前なし。厳密にチェックしたわけではないが、初めて名前が出るのは、8 巻の登場人物紹介か？
18 巻の外伝では院生をやめるか迷っており、一応続けることを決めた。北斗杯のあとでも、院生を続けている場面が描かれているが、プロになったかどうかは作品中ではわからない。
サブ
塔矢 アキラ (とうや あきら)
才能を秘めた売り出し中の主人公 vs. エリートのライバルというのは、少年漫画の鉄板パターンの一つである。小畑健作品で言うならバクマン。の新妻エイジ。他のでは、例えばスラムダンクの桜木と流川、フットボールネーションの沖と一ノ瀬。
塔矢アキラは、突然現れて一切の前置きなしに本題に入るのがいい。別に社会性がないキャラではないのだが、碁にかける情熱がこういう細部から伝わってくる。「インターネット囲碁をやったことは？」「なぜ若獅子戦に来なかった」。1 巻、電車の中で「黒番なら... 白番の時は...」とブツブツ言ってるのも、地味に好きな場面。
父の塔矢名人は、ときどき海原雄山に似ている。
雑感
佐為が消えてからはつまらない？
佐為が消えてからのストーリーと、終わり方には賛否両論がある。とくに、佐為が消えてからつまらなくなったという感想が多いようだ。
個人的には、佐為が消えた後に因島に行くのはあまり面白くなかったが、あのインターバルがないと、伊角さんと打って自分の碁の中に佐為を見つけ出す名場面の感動が薄れる気がする。
塔矢との「初」対局で、塔矢がヒカルのなか佐為を見つけ出す場面も、佐為が消えていればこその名場面なので、17 巻までの「佐為編」は佐為が消えてからも面白く、ほぼ文句なし。
北斗杯も面白いのだが、佐為編に比べるとやはり少し落ちる気がする。最後の「過去と未来を繋ぐ」も、それまでの話の中で間接的にだが説明されてきた概念であり、必須ではないように思う。18 巻のような外伝の一つと思って読んでいる。
あとは、佐為が無双するのは単純な少年漫画であって、佐為が消えてしまい (しかもヒカルと最後の言葉を交わせないという中途半端な状態で)、それがヒカルの成長に繋がるのは、切ないながらも深みがあるストーリーに仕上がっていて、それもこの作品が大ヒットになった理由の一つだろうと思う。
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