お勧めコミック: 極悪がんぼのレビュー
中卒で素寒貧の主人公・神崎が、事件屋としてビッグになっていく足跡を描いた作品。「がんぼ」は広島弁でいたずらっ子とか悪ガキという意味。
ピカレスク・ロマンという言葉が頭に浮かんだけど、どうやらこれは小説のジャンルで、かつ一人称で記述するのが本来のスタイルらしい。
神崎が足元の政官財を手にし、所長に対して独立を宣言するエピソードで終わるのが清々しい。読み返してみたけど、3.5 というスコア以上に好きな作品かもしれない。
田島隆 原作、東風孝広 漫画、全 16 巻。
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主人公
神崎 守 (かんざき まもる)
物語の開始時には 28 歳だった。子供のときに親に捨てられ、児童養護施設に入ることも拒否したため、大変な青少年期を送ってきた。辛い過去をもつだけあって、やっぱり他の事件屋よりも (とくに子供に) 優しいと思う。暮田餅に示した温情は将来の成功を約束するものだった。
物語の中盤では、恋人の智恵子に無茶な要求をしたり、古市からの人望を失ったりと、未熟な一面も見せる。このあたりがしっかりと描かれていることが、この成長譚を奥深いものにしている。
キャプチャの左側が神崎。長い間対立してきた神崎と金子の終盤のやり取り。あえて「誰に」挨拶に行くか書いてないのだが、全編を読んだ人ならほろっとくるようになっている。
名言- オレはビッグになるんじゃ!!
- サンキュー 金子 おまえの気持ちは心の底からうれしいで... じゃけど... 俺は... これからも事件屋としてやっていく。俺は... 俺はこの道でビッグになるちゅうてこの業界に飛び込んだんじゃけん。
ヒロイン
美智子 (みちこ)
この漫画には、女性はあまり出てこない。数少ない女性キャラの一人で、神崎とは風俗で出会う。
最初のうちはうまく行っていたのだが、別れに至る経緯は悲しすぎてここでは書けない。
サブ
金子 千秋 (かねこ ちあき)
神崎の先輩格にあたる秦事務所の事件屋。冬月と夏目は名字に季節が入っているが、金子の場合はなぜか名前だ。
ヘタを打った神崎をひき殺そうとするなど、当初のキャラはかなり暴力的だった。所長と対立し、生死の境を彷徨う。結果的には神崎のベストパートナーになる。
思えば、最初に金子が神崎を作業船に引き渡したときに名刺を渡したのが、この物語のそもそもの始まりだった。
名言- いつあんたがウチの客になるかわからんけんのー
- そんときゃおまえを一人前の男として扱わなきゃいけんのー
雑感
私が極悪がんぼから学んだこと
私が美味しんぼから学んだこと もどうぞ。
- 賭けごとで作った借金は払わなくてもいいが、正規業者が間に入って金を貸してしまえば、返済を迫るのは合法になる。
- 花屋や石屋と組んで霊園開発をやれば、寺はぼろ儲け。産廃業者も太い。
- 農地は法律で売買が原則として禁止されている。
- 船の上では船長がお上。人が死んでもそのまま水葬する権利がある。
関連作品
好きな順に カバチタレ = 特上カバチ > 極悪がんぼシリーズ = カバチ3 > ナニワ金融道 (オリジナル) > ナニワ金融道2。
カバチタレシリーズの 1 と 2 は、主人公の田村をはじめ、直情型の栄田、インテリ系で有資格者の金田、家庭を大事にするタラコのボス・重森、カリスマ所長の大野、ドライな新キャラの住吉と、キャラの個性がうまく設定されている。カバチ 3 の若者は、ちょっと田村の若い頃に似ているものの、彼も悪くない。
ナニワ金融道は、もともと「悪者」を描いた漫画ではあるが、仲間意識があるのかないのか、よくわからない。灰原個人の責任にさせようとする場面が多い。社長の過去が出てくるのもかなり唐突。
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