おすすめ漫画: 花の慶次のレビュー
概要
隆 慶一郎の歴史小説 一夢庵風流記 (Amazon link) を原作とした漫画。
以下は第一巻のあとがき。原作者の隆 慶一郎は、なんと 60 歳で文壇デビュー。その後、わずか 6 年の間に多くの時代小説を発表し、この一夢庵風流記で第二回柴田錬三郎賞を受賞。しかし、授賞式の前に肝不全のため永眠という熱い人生を生きた。漫画家の原 哲夫は、一夢庵風流記で慶次に惚れ込み、入院中の隆 慶一郎に漫画版の原作を頼みに行った。結果的に、原作が完成したのかどうか明瞭に書かれていないが、少なくとも漫画版を見ることなく亡くなったようだ。
なお、慶次の加賀藩は「加賀百万石」などと言われ、石高が日本一の藩のような印象があった。しかし、この漫画では「上杉 120 万石」なども出てきて、ちょっと混乱。これは、一般に石高が重視されるのは江戸時代末期であることに由来する。つまり、江戸時代末期のランキングでは加賀藩は 103 万石で一位、その下に 73 万石の薩摩藩、62 万石の仙台藩 (伊達家)、さらに親藩の尾張、紀州などが続く。ただし、薩摩藩は琉球を実質的に支配下に置き、実情は 90 万石以上だったようである。
一方、この漫画の舞台である戦国時代では、上杉 120 万石の上に豊富 222 万石、徳川 255 万石などが並ぶ。
原作・隆 慶一郎、漫画・原 哲夫。全 18 巻。
主人公
前田慶次郎利益 (まえだ けいじろう とします)
慶次と言われることが多いが、秀吉に名乗っていた前田慶次郎利益が正式な本名と思われる。
当代一の傾奇者にして、教養人でもあり、「もともと強い」最強の武将でもある。完璧すぎる慶次だが、人柄のせいもあって、まったく嫌味を感じない。こういう人間になりたいものである。
名言
- 虎は... なにゆえ強いと思う? もともと強いからよ。お主は もともと弱いから そのような凶相になるほど剣の修行をせねばならぬのだ
ヒロイン
お松
前田利家の奥さん。慶次と助右衛門が惚れている。利家はこの漫画の印象が強かったので、「利家とまつ」でポジティブに描かれていたらしい (ドラマ観ていないので、実際のところはわからない) ことに少し驚いた。
蛇足だったと思っている沖縄編で、慶次は突然に利沙に惚れてしまうが、やはりこの漫画のヒロインはお松殿だと思う。
サブ
松風
最初は、ここで取り上げるのは助右衛門かなあと思っていたが、よく考えてみると、最も慶次に近いのは松風ではないかと思う。ほぼ唯一の敗北とも言えるカルロス戦で、慶次を救ったのも松風である。
黒王号のごとき巨馬。
雑感: 印象に残っているシーン、セリフ
全体を通して、傾奇者のオリジナルな価値観がよく描かれている。印象に残っている場面を列挙。
- 骨の「どうぞお殺し下さい!」 プロローグ的な松風のエピソードでいきなり出てきたので、普通の言葉のセンスとかけ離れてる、と驚いた記憶が。
- 佐々成政の初登場シーン。樽に入った酒を、頭蓋骨で飲んでる。
- 蝙蝠のエピソードで、慶次とともに自爆する役目の「死組」というのがいる。
- 子供の慶次が、前田利久のために熊を取ってきたエピソードで、熊の表情がいい。
- 利家、利久の「どこまでも傾きおるわ」「どこまでも傾きよるわ」
- 慶次が京に入り、千道安が殴られるシーン。北斗の拳を彷彿とさせる「きやー きやー きゃぼぶ べぼらぶら」
- 蕃熊蜂太夫 (ばんぐまはちだゆう) の扱い。「やられ役」をこうやって徹底的に描くのも、北斗の拳に通じる。
- 秀吉との歌舞伎御免状のエピソードが、一番好きかもしれない。
- 石田三成のふんどしで耳をほじる場面も捨てがたい。
- 兼続は、佐渡攻めの章で修理にあっけなく倒されたのがちょっと残念だった。
- 猿飛佐助。小柄ですばしっこい忍者というイメージだったのだが、なんかラオウみたいなのが出てきて衝撃だった。「雪すら俺には熱い!」
- 大道寺政繁の陣で慶次たちが幸若を舞い、利家たちが「あっ」のシーン。
- 伊達政宗の弟、小次郎のセリフ。「とりあえず 海へ そして生きるだけ生きたら 野垂れ死に致します...」
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