おすすめ漫画: 火の鳥のレビュー
古典だが、いま読んでも面白いアイディアに満ちている。完結しなかったことが惜しまれる。
各編ごとに個別のページを作るか、全てをまとめたページを作るか迷ったのだが、とりあえずはこのページに各編を含めていくことにした。まだ中途半端だが公開しておく。再読のときにまたアップデートしていきたい。
好きなのは太陽編、未来編、黎明編。次いで宇宙編、鳳凰編、異形編あたり。それほど好きでない作品も含めた総合おすすめ度は 4.5 とした。話のスケールの大きさは他に類を見ない。壮大な漫画である。子供の頃、学校の図書館においてある漫画は火の鳥とはだしのゲンだけだった。
主人公: 火の鳥
アマテラスの誕生 (Amazon link) という本を読んでいたときに、インド神話のインドラを評して「善悪未分」の神という表現が出てきた。つまり神の存在というのは非常に大きいもので、人間の判断で善悪を判断できるようなものではないということである。
火の鳥も、ときどき理解に苦しむ行動をしたり、妙に意地悪に見えたりすることもあるが、人地を超えた超有生命体なので、その行動は我々が簡単に解釈できるようなものではないのだろう。
黎明編
あらすじ 3 世紀の倭、ヤマタイ国によるクマソの征服。生き残ったナギは、ヤマタイ国の猿田彦に奴隷として連れ帰られる。老いたヒミコは火の鳥の血を欲しており、クマソに進軍。猿田彦とナギはヤマタイ国の戦士としてニニギ率いる高天原族と戦うが、敗れて戦死してしまう。 スパイとしてクマソに潜入していたグズリは、ナギの姉ヒナクと結ばれていた。ヤマタイ国の襲撃と同時に起こった火山の噴火によって、大きな穴の中に閉じ込められ、そこで子孫を増やす。息子のタケルが穴から脱出する場面は、次のヤマト編へ繋がっている。 |
ヒミコの弟がスサノオなので、つまりヒミコがアマテラスと同一視されている。とするとナギという名前はちょっとおかしい。彼はイザ・ナギつまりイザナギで、ヒミコやスサノオの親にあたる神である。
これは、漫画少年という雑誌に連載されていた黎明編の初期バージョン、いわゆる「漫画少年版」の設定に由来する。このバージョンは、ナギとナミという兄妹が火の鳥の血を飲んで、島国に流れ着くといういわゆる「国産み神話」的な構成になっている。現在、「黎明編」と言われているものは、これが大きく改訂された COM 版というもの。ストーリーを大きく変えたあとも、ナギの名前はそのまま使うことにしたのだろう。
なお、黎明編の初出は「漫画少年版」が 1954 年、未完。COM 版は 1967 年。1983 年に発売された「ファミコン」という言葉が作中に出てきて不思議だったのだが、角川文庫版は 1985 年の単行本をもとにしているらしい。作者はずっと細かい改訂を続けていたようだ。
スサノオが暴れて追放される話、天岩戸神話など、記紀をかなり下敷きにしている。
ニニギは天孫降臨のニニギノミコト。いわゆる「騎馬民族襲来説」の立場をとっており、大陸からわたってきた高天原族という部族の首領となっている。
ヤマト編
あらすじ 4 世紀ごろの倭。古墳時代にあたる。記紀のヤマトタケルノミコト伝説などを下敷きにしている。黎明編で大穴から脱出したタケルがクマソを再興しており、長老として登場する。 主人公は、ヤマト国の王子ヤマトオグナ。クマソ国の酋長・川上タケルが、ヤマトに不都合な歴史書を編纂しているという理由で暗殺に向かう。オグナは川上タケルの妹・カジカと出会い恋に落ちるが、迷いながらも結局川上タケルを殺してしまい、カジカに、仇として命を狙われることになる。 |
宇宙編
実験的なコマ割り。宇宙船の中でミイラになった牧村が、若返るのかサイボーグなのか、鳥を殺したのか女を殺したのか、いろいろ情報が錯綜するがきちんとまとまるのが凄い。彗星の核の絵も迫力があって、ちょっと怖いながらも魅力的だ。
鳳凰編
最初の方の我王は超悪い。川上タケルの記した歴史書が、火の鳥の記述とともに登場する。また、正倉院に鳳凰の図がある。火の鳥鳳凰編のファミコンゲームを、子供の頃にプレーしていた記憶がかすかにあり、この鳳凰の図を完成させていくようなゲームだったような気がする。
望郷編
ロミ、最初に目覚めたときにシバを撃ったのはやりすぎだと思う。牧村が登場するが、宇宙編の牧村と同じ人物なのか? 火の鳥がけっこう直接的に介入している。
乱世編
ちょっと地味というか、もっさりした印象。弁太の顔も問題だが、おふうが平氏に簡単に寝返ったのも、義経があまりに悪人になったのも良くなかった。つまり、感情移入できるキャラクターがいなかった。我王が登場。
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