小松左京「さよならジュビター」の感想
作品紹介と感想
作品の舞台は 22 世紀。惑星工学が発展し、火星の氷のプレートを溶かして資源にする計画が進んでいた。プロローグでは、火星の氷層の下からナスカ絵が現れてくる。この地上絵は、遥か昔に太陽系にやってきた宇宙人からの警告のメッセージだった。実は映画のノベライズ作品。
雰囲気が似た作品、というか、同じように
- 火の鳥
- 7SEEDS (コミック)
一昔前の二流 SF のアイディア
批評も多い作品だ。とくに
読ませる作品に仕上がっているのは、たぶん圧倒的なディーテールと筆力のおかげだと思う。とくに、荒れ狂う木星の大気に宇宙船でダイブしていく描写は、他の作品では見たこともないほどの迫力に溢れている。
太陽系のはるかかなたにある彗星源からやってくる彗星が激減し、探査のためその方向に飛ばした宇宙船も行方不明になる。現在の読者なら「ああ、ブラックホールね」という感じだと思うが、たぶん 1980 年代には珍しいアイディアだったのではないかと思う。この「何かが迫ってくる」雰囲気も、緊張感をもって描かれている。
タイトル
惑星資源を利用するプロジェクトの一つとして、木星に人工的に核融合反応を起こさせ、太陽系開発のためのエネルギーとする js 計画が進んでいる。結局、木星をブラックホールにぶつけて軌道をそらすことになり、これがタイトルの由来だ。
このほかに、ヒッピー的な価値観の宗教団体が出てきて、木星の破壊を邪魔しようとする。その教団のシンボルが「ジュピター」という名前のイルカで、これがサメに襲われて死んでしまうのだけど、これとかかったタイトルになっている。
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その他の好きなところ
第 5 章でリンドバーグから話が再開する間の取り方がたまらない。
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